動画制作においては「誰に」「何を」「どのように伝えるか」が非常に重要です。
どんな動画を作っていくのか、その方向性やイメージをクライアントと制作会社ですり合わせするために欠かせないのが「絵コンテ」や「ラフコンテ」です。
この記事では「動画制作に重要な絵コンテの書き方やその準備、作成のポイント」などを、製造業・製薬、医療機器メーカーに特化した動画制作会社の株式会社エルモがご紹介します。
目次
動画制作における絵コンテ・ラフコンテとは?
絵コンテやラフコンテはひとことで表すと「動画の設計図」です。
各コマの意図や内容、流れ、ナレーション、画面のイメージ(ビジュアル)などが書かれており、この絵コンテをもとに制作を行います。
インタビュー動画のように撮影したものを調整することがメインの動画は絵コンテを作成しないケースもありますが、企業紹介動画や採用動画などのストーリーがあって複数の要素から構成される動画や、イラストやCGが主体の動画では基本的に絵コンテを作った上で制作を進めます。
また、使用する機材やタイムスケジュールなど、さらに詳しく記載されていることもありますが、絵コンテのフォーマットは制作会社によって異なります。
絵コンテを作成する目的
動画制作において絵コンテは非常に重要なプロセスですが、その目的は大きくわけて3つあります。
絵コンテを作成する目的
- 動画の内容や流れを共有する
- 撮影するカットや作成するイラスト・CGのボリュームを確認する
- キャスト・制作スタッフとの意思疎通
動画の内容や流れを共有する
動画制作においてまずはじめに取り掛かるものがシナリオの作成で、シナリオからコマ割り、絵コンテ作成へと進みます。
シナリオはテキストベースでも共有できるものの、動画制作に不慣れな方がテキストベースのシナリオ見た場合、合っているか間違っているかの確認はできても、その流れまでをイメージすることは困難です。
そのため、シナリオをざっくりとコマ割りに落とし込み、画のイメージを大まかに記載したラフコンテ(絵がない絵コンテ)として共有することで、動画の内容だけでなく大まかなシーンやボリュームをクライアントが把握しやすくなります。
動画制作に初めて携わる方が多いシチュエーションでは、ラフコンテをシナリオとして共有・確認した方が制作をスムーズに進行させることができます。
撮影するカットや作成するイラスト・CGのボリュームを確認する
シナリオを作成してラフコンテへと落とし込んでいくと、動画全体の「撮影量」と「各シーンに必要なカット」を洗い出すことができます。
イラストやCGで構成する動画の場合も、「どのような内容のイラスト・CGが何点必要か」を把握できるため、全体のボリューム感を具体的に掴むことが可能です。
これらの情報を早い段階で共有することのメリットは大きく、特に撮影の場合は当日に向けた受け入れ体制の整備や人員の確保、スケジュール調整などを具体的に進めていただくことが可能となり、撮影当日のスムーズな進行に役立ちます。
「段取り八分、仕事二分」という言葉があるように、事前の準備は非常に重要です。
キャスト・制作スタッフとの意思疎通
クライアントとの確認作業だけでなく、キャスト・制作スタッフとの意思疎通においても絵コンテは非常に重要な役割を持ちます。
動画制作ではシナリオや構成を考える企画側と、実際の制作や編集を行う制作側にわかれて進めていくため、企画側で考えた内容や演出を正しく制作側へ伝える際の指示書・設計図として機能します。
絵コンテがあることによって企画側の意図が正しく反映されない、制作側で認識違いが起こるなどの事態を防ぐことができるため、動画制作をスムーズに進行させやすくなります。
動画制作の流れと絵コンテ作成のタイミング
動画を制作する流れとしては、以下のような7つのステップに分けることができます。
- ヒアリング
- 企画構成
- シナリオ、絵コンテ作成
- 撮影
- 編集
- ナレーション収録、MA作業
- 納品
制作する動画の内容によっては撮影がなくアニメーションのみで仕上げるものや、ナレーション収録が不要なケースなどもありますが、一般的には上記のようなプロセスを辿ります。
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絵コンテを作成するタイミング
絵コンテは、制作会社が動画に関する企画提案を行い、クライアントに承認(発注)されたあとに作成するのが一般的です。
提案内容によっては、特定のシーンだけを先行で作成するケースもありますが、例外的であり案件や制作会社のやり方によっても異なります。
まずはシナリオの内容を固め、 その後絵コンテで動画の全体像やコマ割り、各種要素、イメージなどを見える化します。
クライアントのフィードバックもいただきながら完成させていき、内容が確定し次第、制作スタッフに共有して本格的に動画を作っていくという流れになります。
絵コンテの作成は基本的に制作会社に任せる
まれに制作予算等の問題で、企画作業をクライアントで行うことで全体の予算を落とせないかという相談をいただくケースがあります。
シナリオから絵コンテまで自社で作成すれば、さぞ制作会社の負担も減るだろうと思うかもしれませんが、特に絵コンテの作成は制作会社に任せた方が無難です。
絵コンテは、必要なカットや必要な素材(イラストやCG等)、編集のしやすさなどを考慮して作成する必要があるため、動画制作のプロセスに明るくない人が作っても不十分なものになってしまいます。
その不十分な絵コンテを共有しても、制作会社側で修正が必要になってしまい結局手間がかかってしまうため、制作会社で働いていた人材がいるなどの特殊なケースを除き、絵コンテの作成はプロに任せましょう。
制作会社を選ぶ際は、「自社の希望・要望をしっかりとヒアリングしてくれる会社」「限られた情報からでも背全体を構成できる企画力がある会社」を選ぶようにしてください。
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絵コンテを作成する前に準備しておくべきこと
絵コンテを作成するためには事前に準備しておきたいいくつかのポイントが存在します。
動画制作の目的・目標を明確にする
動画を制作する一般的な目的には、「認知拡大」「販売促進」「ブランディング」「人材採用」などがあります。
しかし、目的がはっきりしていないと、動画の方向性が定まらず、ターゲットに伝えるべき内容が曖昧になって訴求力が落ちてしまいます。
例えば、販売促進が目的であれば、商品やサービスの魅力を強調するようなアプローチが必要ですが、認知拡大が目的であれば、ブランドのイメージや価値観を伝える内容が重要になります。
さらに、目的によっては必要な参考資料やデータも異なります。
例えば、販売促進が目的であれば、過去の販売データや競合他社の動向の分析が重要ですが、認知拡大が目的であれば、ターゲットの属性や行動パターンの理解が重要になります。
目的がはっきりさせることで、制作会社の選定や制作プロセス全体をスムーズに進行でき、より効果的な動画を生み出すことが可能となります。
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動画を視聴してほしいターゲットを明確にする
動画は訴求するターゲットが明確になっているほど、その対象に伝えたい・伝わるメッセージを盛り込みやすく、動画のメッセージ性や訴求力が高まります。
「顧客」をターゲットにするのか、「投資家や株主」をターゲットにするのか、「求職者」をターゲットにするのかによっても伝えるべき内容は大きく変わってきます。
また、企業紹介動画のように幅広いターゲットに訴求する場合は、
●どんなターゲットにもある程度伝わる汎用的な内容にする
●複数のチャプターで構成して、チャプターごとに訴求する内容を変える
などの選択肢があり、その構成によっても内容が変わってきます。
絵コンテは動画の内容を具体的に固めていくプロセスになるため、「誰に対して伝えたいのか」を明確にすることが効果的な動画コンテンツを制作する第一歩になります。
絵コンテ作成に役立つ資料を揃える
絵コンテやラフコンテの作成においては、参考となる資料が多ければより具体的に作りやすくなります。
よく参考にする資料や情報は以下になります。
- 会社案内パンフレット
- 製品カタログ、チラシなど
- 統合報告書
- 会社説明用のPowerPoint資料
- コーポレートサイト・採用サイト
- 採用媒体(ナビサイトなど)
- 過去に制作した動画
制作会社に上記の情報を複数提供しておくと、より早い段階で絵コンテを作成でき、内容も具体的になるためおすすめです。
絵コンテ作成の流れ
絵コンテを制作する流れを3つのステップにわけてご紹介します。
1. シナリオ(ナレーション)を作る
絵コンテというと、まず絵を描くことをイメージしがちですが、最初にやることはシナリオ(ナレーション)を作ることです。
実写形式であれ、アニメーション形式であれ、動画制作の基本は「シナリオ(ナレーション)に対して、その内容を説明する画をつけていく」ことであり、シナリオが定まっていない状態で画を作っても内容がマッチしなかったり、二転三転してしまう可能性が高まります。
特に初めて動画を制作する場合は、「動画制作の目的やターゲット」、「解決したい課題」、「伝えたい内容」をなどを制作会社に共有した上で、シナリオを作ってもらいましょう。
何もわからない状態で1から自社で作成するよりも、制作会社が作ったシナリオを添削するほうがスケジュール面でもクオリティ面でも安定します。
制作会社選びでは、このシナリオ作成をどちらがやるのかも含めて判断することをおすすめします。
素読みで全体の尺を測っておく
自社でシナリオ(ナレーション)を作る場合は、作ったあとに音読して全体の尺(秒数)を確認しておくことが重要です。
「2分の動画を作りたいのに音読すると3分になっていた」ということはよくあることで、この作業によって伝えたい内容と伝えられる内容のギャップを認知できます。
また、2分の動画に対して素読みが2分だった場合、編集すると確実に尺をオーバーします。
編集では、映像の切り替わりに効果やエフェクトを追加したり、場面転換のタイミングでトビラ画面を設けて区切りを作ったりするため、素読み段階よりも尺は長くなります。
2分の動画を作るならシナリオ(ナレーション)は1分40秒程度に留めておくのが無難です。
2. カット(コマ)割りを決めていく
シナリオ(ナレーション)を作ったあとは、細かいカット割りを決めていきます。
カット割りとは、シーンごとの構図、シーンとシーンのつなぎのことで、シナリオに合わせて場面をどのように展開させていくか、このナレーションに対してどのような画を出すかを決めていく工程です。
制作会社によっては、このシナリオとカット(コマ)割りを先に行い、ラフコンテとしてクライアントとの状況共有に使うケースもあります。
シナリオ(ナレーション)の内容と大まかな画面構成や展開を把握できるため、テキストベースのシナリオよりも完成形がイメージしやすくなります。
1カットは3秒~5秒程度にとどめる
自社でカット(コマ)割りを作る場合は、1コマあたりを3秒まで、長くても5秒程度にとどめるようにしてください。
1つのコマに対してシナリオ(ナレーション)が多すぎると、画面に動きがない状態でナレーションが流れるため、退屈な印象になってしまいます。
画面の切り替わりをイメージしながらカット割りをしていくことが大切です。
3. イメージを描写 or 入れていく
全体のシナリオ、カット(コマ)割りが完成したら、各シーンにイメージを入れていきます。
撮影をするか、素材を使うか、イラストやCGを使うかによっても内容が異なります。
●撮影する場合:クライアントから支給された写真やイメージ写真を入れる
※後から実際に撮影するため、イメージが伝わればOK
●素材を使う場合:候補となる素材を選定して入れる
●イラスト(CG)を使う場合:各シーンの内容に合わせて作成していく
※イラスト・CGの場合は絵コンテの内容を動かしていくため、予めしっかりと確定させる
絵コンテを作成・確認する際のポイントや注意点
絵コンテを作成するにあたり、事前に押させておきたいポイントや注意点をご紹介します。
メッセージを詰め込みすぎない
絵コンテを作成したり、確認したりする際は「メッセージを詰め込みすぎないように注意する」ことが大切です。
せっかく動画を作るのだからとあれもこれもと詰め込んでしまうと、想定した尺を簡単にオーバーしてしまいます。
尺は伸ばせば解決しますが、動画内の要素が増えれば増えるほど長く冗長な印象になるため、かえって印象に残らない動画になってしまえば本末転倒です。
特にここ数年は短い動画が好まれるようになっているため、伝えるべき情報を取捨選択して、できる限りコンパクトに構成することが重要になります。
撮影する場合は参考程度に捉えておく
実写の撮影では、当日撮れたものを反映するため、絵コンテ上での記載は参考程度に捉えておくのが無難です。
というのも撮影当日の状況によって、思ってもみなかった素晴らしいカットが撮れることもあれば、予定していたカットが撮れないケースもあります。
もちろん不測の事態に対応できるよう、ある程度多めに素材を確保するものの、良くも悪くも撮れ高によって画が変わるのが実写撮影でもあります。
ある程度の方向性は決めておき、当日の状況にあわせてクライアントと相談の上で決めていくのが、スムーズに撮影を進めるためのポイントです。
イラスト・CGを作る場合は絵コンテ段階で内容を確定させる
上記の撮影とは真逆で、イラストやCGを作る場合は絵コンテ段階で内容を確定させることが必要です。
撮った映像をつなぎ合わせて動画を作る実写形式と異なり、イラストやCGはあらかじめ作った素材を動かすことで動画として完成するため、制作のプロセスがまったく異なります。
もし制作したイラストやCGを動かしたあとに大きな修正が入ってしまうと、またイラストやCGを作り直すことからはじめなければならず、手戻りが多く時間と費用が追加でかかってしまいます。
編集する前の素材の段階であれば、まだ比較的修正が容易であるため、気になる点がある場合は必ず絵コンテ段階で指摘・修正するようにしてください。
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動画制作に重要な絵コンテの書き方とは?に関するまとめ
動画制作において、その内容や流れ、必要な素材を正確に確認・共有するために、絵コンテは非常に重要な役割を持ちます。
ほとんどのケースでは絵コンテは制作会社が作成するため、自社で作成することを想定する必要はありませんが、「絵コンテはどのような役割で、何を確認したいのか」を理解しておくと、クライアント側もスムーズに確認を進めることができます。
絵コンテをきっちり確認して、自社の狙いや想いがきちんと反映されているのかを確認の上、制作をすすめるようにしてください。
わたしたち株式会社エルモは、製造業や製薬・医療機器メーカーを中心に500社以上の動画制作実績があります。
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この記事の監修者
伝わる動画制作 編集部
製造業や製薬、医療機器メーカーに特化した動画制作会社として、製造業・医療業界ならではの課題と、その解決法としての動画活用術を発信。広報販促、マーケティング、ブランディング、採用、研修・安全教育など、それぞれの領域における動画活用の最新情報やノウハウ、事例などを随時お伝えしています。