動画の中でも、周囲を360度見渡せる「360度動画」は珍しい存在です。

そのテクノロジーとインパクトによって話題になったこの360度動画ですが、ビジネスに活用することはできるのか。

今回はビジネス(製造業)における360度動画にスポットを当て、その特徴やVR動画との違い、製造業における活用法、作り方などを製造業・製薬、医療機器メーカーに特化した動画制作会社のエルモがご紹介します。

360度動画とは

360度動画とは、360度のさまざまな角度から景色や物を確認できる動画のことを指します。

全天球動画、パノラマ動画、VRとも呼ばれ、いずれも一度に360度全方向からのアングルを見られる動画を指しています。

一般的なカメラでは、レンズの正面方向を撮影しその範囲はレンズによって異なります。

しかしながら360度動画は、全周囲を撮影できる特殊なカメラを用いて、前後、左右、上下すべてをまとめて撮影することができます。

通常の動画に比べて360度すべてに映像があることから、自分自身が本当にその空間にいるような疑似体験をすることができるため、特にエンターテインメント方向での活用が多い動画です。

360度動画とは

  • 360度動画の種類
  • 360度動画の仕組み

360度動画の種類

360度動画には大きくわけて以下の3種類があります。

ドームマスター形式

360度の画像・映像を1枚におさめた円形の魚眼画像で、主にプラネタリウムで使用されることが多い形式です。

正距円筒図法(パノラマ)形式

メルカトル図法の地図に似た仕組みで、周りの風景を球面から平面に変換する形式です。
風景動画によく活用されています。

キューブマップ形式

立方体の一部分から周囲を見渡したような映像になることが特長で、3DCGのマッピングによく活用されている形式です。

360度動画の仕組み

360度動画は通常の機材で撮影することはできず、専用の360度カメラが必要となります。

このカメラは「全天球カメラ」とも呼ばれ、単一のカメラが広範囲を撮影して球体状の映像を作り出す方式と、180度以上の画角を持つ魚眼レンズを背中合わせに配置して360度をカバーする方式などがあります。

この場合は、撮影した複数の映像を自動的につなぎ合わせることで、違和感のない360度動画を作り出せます。

基本的に360度撮影に適したカメラがあれば撮影することはできるため、比較的ハードルの低い手段といえます。

360度動画とVR動画の違い

360度動画とVR動画は「360度、さまざまな角度から確認できる」という点では共通しており、自分の好きな方向に角度を変えることで、通常の動画では味わえないような「臨場感」を味わうことが可能です。

一見すると同じようにも見える360度動画とVR動画ですが、違いとしては「体験の違い」と「専用機材の有無」にあります。

360度動画とVR動画の違い

  • 360度動画は現実世界、VRは仮想世界を描写
  • VR動画にはヘッドセットなどの専用機材が必要

360度動画は現実世界、VRは仮想世界を描写

360度動画

360度動画がよく活用されるケースとしては「物件の内覧」や「展示ブース」「工場」などの現実にあるシチュエーションです。

自分が見たい方向をクリック/タップして見ることはできますが、あくまでカメラを置いた場所を中心とした視点で、自由に動き回ることはできません。

Googleストリートビューをイメージいただくとわかりやすいと思います。

VR動画

対してVRは現実世界では撮影が難しいシチュエーションを仮想空間として描写します。

例えば「火災がおきたビルから避難する仮想訓練」「実際におきた事故を当事者の視点で追体験する安全教育」などです。

VRでは、自分自身が立ったりしゃがんだりすれば視点はその状態によって変わるほか、キャラクターも手元のコントローラーを使って自由に動かしたりできます。

 
あくまで「見る」に特化した360度動画と「体験する」に重きを置いたVR動画とでは実際の活用シーンも変わってきます。

VR動画にはヘッドセットなどの専用機材が必要

360度動画

360度動画は、既存のスマートフォンやパソコンの画面をクリック/タップするだけで、好きな方向を見ることができます。

360度動画はYouTubeも対応しているため、特に専用のソフトや機材がなくとも、誰もが業務で使うデバイスがあれば、誰でも簡単に360度動画を体感することが可能です。

VR動画

対してVRでは、専用のヘッドセットやコントローラーが必要となります。

前項でもご紹介した通り、VRでは「体験する」ことに比重が置かれているため、その没入感を演出するためにも専用機材が必要不可欠なのです。

そのため、展示会などのイベントでは活用しやすいものの、通常の営業活動においては誰もが使えるわけではない点がネックになる場合があります。

 
伝えたい内容によって、360度動画の方が向いている分野もあれば、VR動画の方が向いている分野もあります。

それぞれの適性に合わせて使い分けることが重要です。

ビジネスに360度動画を活用するメリット

ビジネスにおいて、360度動画を活用するメリットは大きく以下の2つがあります。

ビジネスに360度動画を活用するメリット

  • 実際に現地に行かずとも、詳しく内容を確認できる
  • 専用機材が不要で使い勝手が良い

 

実際に現地に行かずとも、詳しく内容を確認できる

工場や研究所、施設などはそこに実際に足を運んで見ていただくのが本当は理想的です。

ですが、お客様が遠方や海外であるなどのさまざまな理由から、現地に来ていただくのが難しいケースが多いことも事実です。

360度動画はその性質上、自分自身が実際にそこにいるかのような臨場感と、自由に周囲を見て回れる手軽さが大きな魅力です。

人によっては見たいものも異なるため、”ある方はAとBのライン”・”ある方はCやDの設備”といったように、それぞれが自分の関心のあるものを自分の意志で確認できる点も従来の動画とは異なるメリットのひとつです。

また、実際の見学においては安全上の観点の観点から立ち入ることができない場所も存在しますが、360度動画の場合はこのような制約がないため、「遠方からしか見れないライン(設備)を間近で確認できる」こともポイントです。

専用機材が不要で使い勝手が良い

前項でもご紹介しましたが、ヘッドセットなどの専用機材が必要なVRに対して、360度動画はパソコンやタブレット、スマートフォンなどの従来のデバイスがあれば誰でも簡単に体感することが可能です。

大きなモニターがある会議室でも、外出先の現場でのやり取りでも、シチュエーションを問わず気軽に活用できる点はVR動画にはない大きな魅力です。

大きな組織の場合、各営業所や各課でヘッドセットを購入するとそれだけでも大きなコストになりますし、お客様にヘッドセットを付けてもらうとなると、髪型や化粧のくずれ、衛生面などで課題も出てきます。

伝えられる情報量や没入感はVR動画の方が優れていますが、ビジネスにおいて組織的に活用・導入することを考えると、360度動画は非常に適した選択肢だと言えます。

360度動画の活用例

動画マーケティングにおける成功事例をいくつかご紹介します。

360度動画の活用例

  • 不動産のバーチャル内覧会・物件紹介
  • 工場・研究所などのバーチャル施設紹介
  • バーチャル展示会

 

不動産のバーチャル内覧会・物件紹介

現在、360度動画を最も活用しているのが不動産業界におけるバーチャル内覧会や物件紹介です。

賃貸物件やテナントのようすを自分の目で自由に動かしながら確認できるため、人によってそれぞれチェックポイントが異なる物件では、幅広い方に訴求できるツールとして有効活用されています。


引用:【360度動画】新・中日ビル 地下1階から地上7階まで歩いてみた!!

工場・研究所などのバーチャル施設紹介

工場や研究所をはじめとしたメーカーにおける生産・開発拠点については、それ単体で工場紹介動画や研究所紹介動画を作ることも珍しくありません。

その中でも特に受託製造や受託開発を引き受ける企業については、これらの施設や設備のPRがより重要な役割をしめます。

国内はもとより海外の受託を取っていくとなると、実際に足を運んでもらえないケースも出てくるため、そのような方に対していかに自社の生産体制や保有設備をわかりやすく伝えられるかが課題になります。

現地に足を運ばずとも施設を隅々まで確認できる360度動画は、お客様の理解や納得感を高めるツールとして有効に活用できます。


引用:富士山工場360°VR 「アサヒ 十六茶」PET2L製造ライン

工場紹介 動画とは?そのメリットや活用シーン、作り方のポイントを解説

工場紹介 動画は、主に自社工場の製造工程や製造技術、導入している設備、そこで働く社員の方々、そして企業文化をビジュアルで伝えられるツールです。工場紹介 動画のメリットや作り方のポイント、費用や制作期間、制作実績などをご紹介します。

バーチャル展示会

人との接触が大幅に制限されたコロナ禍において積極的に展開され、その後少しずつ数を増やしつつあるのがバーチャル展示会です。

諸事情で会場に足を運べなかった人でも会場全体や展示ブースのようすを遠隔地から確認できます。

現時点ではあくまで会場のようすをカメラを通じて伝えるものが主流ですが、将来的には仮想空間上にブースを設営し、個々が自身のアバターを通じてリアルタイムにやりとり・商談ができる構想も進んでおり、今後の展開が楽しみな分野です。


引用:USA展示会360°撮影|ナショナルペーブメントエキスポ2022|2022/02/23-25

360度動画のまとめ

360度動画は数ある動画コンテンツの中でも少し特殊なもので、何にでも使える汎用性の高さがあるものではありません。

しかしながら、他の動画にはない魅力を数多く有しており、使い方を見極めて正しく活用すれば非常にリアリティが高く有効な訴求手段となります。

また、撮影自体もそれほど難しくなく、比較的短時間で撮影ができるものでもあるため、通常の動画撮影と並行して360度動画の撮影を実施することも可能です。

不動産業界では物件紹介、製造業では工場紹介や研究所紹介などとの相性が特に良いため、顧客の課題解決に繋げたり、納得感を高める方法として有効に活用できます。

360度動画に関心がおありの方はぜひお気軽にご相談ください。

わたしたち株式会社エルモは、製造業や製薬・医療機器メーカーを中心に500社以上の動画制作実績があります。
販促PRから採用活動、ブランディング、社内の技術継承、安全教育、周年式典にいたるまでBtoB取引におけるあらゆる用途の動画を制作しています。
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この記事の監修者

伝わる動画制作 編集部

伝わる動画制作 編集部

製造業や製薬、医療機器メーカーに特化した動画制作会社として、製造業・医療業界ならではの課題と、その解決法としての動画活用術を発信。広報販促、マーケティング、ブランディング、採用、研修・安全教育など、それぞれの領域における動画活用の最新情報やノウハウ、事例などを随時お伝えしています。

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